ECサイトの費用は3つに分けて考える

ECサイトにかかるお金は、性質の違う3つが混ざっています。この区別をしないまま「いくらかかるか」を考えると、必ず見積もりを外します。

ECサイトにかかる費用の3分類 費用は、一度だけ発生する初期費用、毎月固定でかかる費用、売上に比例して発生する費用の3つに分かれる。 初期費用(一度だけ) 初期登録料/デザイン・制作費 商品登録・写真撮影・原稿作成 毎月かかる費用(固定) 月額利用料/オプション機能 サーバー・ドメイン/保守費 売れたときの費用(売上に比例) 決済手数料/販売手数料 モール利用料(モール出店の場合)

見落とされるのは3番目です。 初期費用と月額は見積書や料金表に必ず載っていますが、売上に比例する費用は「3.6%」のような率でしか書かれていません。率は売上が小さいうちは小さな金額ですが、売上が伸びるほど効いてきます。

この記事での「構築費用」の扱い

一般に「構築費用」と言うと初期費用だけを指しますが、実際に必要なのは公開後も払い続ける金額です。この記事では3つすべてを含めた総額で比較しています。

構築方法別の費用相場

まず全体像です。構築方法によって桁が変わります。

構築方法初期費用の相場月額の相場向いている規模
ASP(SaaS)型0〜100万円0円〜10万円立ち上げ〜年商1億円程度
クラウドEC型300万円〜10万円〜年商1億〜50億円
オープンソース型100万〜500万円数千円〜(サーバー代等)社内に開発体制がある場合
パッケージ型500万円〜10万円〜基幹システム連携が必要な規模
フルスクラッチ500万円〜数千万円数十万円〜ECが事業の中核

ASP型の「0〜100万円」という幅の広さが、この表の分かりにくさの正体です。 自分で作れば0円、デザインを制作会社に依頼すれば100万円。同じASP型でも、誰が作るかで100万円変わります。

つまり構築費用を左右する最大の要因は、構築方法ではなく「自分で作るか、外注するか」です。以降はこの2つに分けて見ていきます。

自分で作る場合、実際にいくらかかるか

ASP型を使って自分で構築した場合の、年間の総額を試算します。相場ではなく、各社が公式サイトに掲載している実額から計算した数字です(2026年9月時点)。

前提は次のとおりです。

  • 客単価5,000円、決済はすべてクレジットカード
  • 有料オプションは使わない
  • 年払いが選べるプランは年払いを選択
  • デザインは標準テンプレートを使用(制作費0円)
プラン年商100万円年商500万円年商1,000万円
BASE
スタンダード
約7.4万円約37.0万円約74.0万円
BASE
グロース
約22.8万円約34.4万円約48.9万円
Shopify
Basic
約7.9万円約22.1万円約39.9万円
カラーミーショップ
レギュラー
約9.7万円約23.3万円約40.3万円

試算の注意点

各社の公開料金をもとにした概算です。決済手段や商品単価、必要なオプションによって実際の金額は変わります。料金体系も改定されるため、契約前には必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。

注目すべきは年商100万円と1,000万円で順位が入れ替わる点です。年商100万円ではBASEのスタンダードプランが最も安いのに、年商1,000万円では最も高くなります。

なお初期費用はどれもほとんどかかりません。 BASEとShopifyは0円、カラーミーショップのレギュラープランでも3,300円です。ASP型を自分で構築する限り、初期費用は判断材料になりません。差がつくのは公開後に払い続ける部分です。

ただし独自ドメインを使う場合は、ドメインの取得費が別途必要です。サービスによっては特典で無料になることもあるので、契約前に確認してください。

「初期費用0円」の落とし穴

なぜ順位が入れ替わるのか。月額0円のプランは、その分を売上から回収する設計になっているからです。

BASEのスタンダードプランは、決済手数料3.6%+40円に加えてサービス手数料3%がかかります。客単価5,000円なら40円は0.8%に相当するので、売上に対して合計7.4%前後が引かれる計算です。

年商別に見た年間総額の比較 年商100万円ではBASEのスタンダードプランのほうが安いが、年商500万円以上ではShopify Basicのほうが安くなる。 BASE スタンダード(月額0円) Shopify Basic(月額3,650円) 7.4万 7.9万 年商100万円 37万 22万 年商500万円 74万 40万 年商1,000万円 年間の総額(月額+手数料)

一方でShopify Basicは年払いで月額3,650円、決済手数料3.55%です。固定費は発生しますが、売上に比例する部分が約半分です。

この2つが逆転するのは年商110万円前後、月商にすると10万円弱です。つまり月に10万円も売れないうちは月額0円が有利、それを超えたら有料プランのほうが安いということになります。

迷ったら

月商10万円を超える見込みがあるなら、最初から有料プランで始めたほうが総額は安く済みます。売れ始めてから乗り換えると、商品データや顧客データの移行、URL変更にともなう検索順位の落ち込みという別のコストが発生するためです。

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ECモールに出店する場合との違い

自社ECではなく、Amazonや楽天市場などのECモールに出店する選択肢もあります。費用の構造がまったく違うので、同じ土俵では比べられません。

たとえばAmazonの場合、大口出品は月額4,900円(税抜)、小口出品は商品が売れるごとに100円(税抜)です。これに加えて販売手数料がカテゴリーごとに5%〜15.4%程度かかります(2026年9月時点、公式サイトより)。

自社ECのASP型と並べると、月額は同水準でも売上に比例する部分が2〜4倍になります。

手数料の高さ=割高、ではない

モールの手数料には集客が含まれていると考えると見方が変わります。自社ECは手数料が安い代わりに、広告費や記事作成といった集客コストを自分で負担します。表に出る手数料だけを比べると、自社ECのほうが安く見えるのは当然です。

判断の目安はこうです。すでに指名で買ってくれる顧客がいるなら自社EC、これから認知を取りにいくならモール、という分け方が現実的です。両方やる事業者も多く、その場合はモールで認知を取って自社ECへ誘導する形になります。

制作会社に依頼する場合の内訳

デザインや機能を作り込みたい場合は外注することになります。見積書に並ぶ項目は、おおむね次の5つです。

  1. 要件定義・設計

    何を作るかを決める工程。ここが曖昧なまま進むと、後工程での手戻りがそのまま追加費用になります。

  2. デザイン制作

    トップページ・商品一覧・商品詳細など、ページ単位で見積もられることが多い項目です。

  3. 構築・実装

    デザインをカートシステムに載せる作業。カスタマイズの量で金額が大きく動きます。

  4. 商品登録・データ移行

    商品点数に比例します。既存サイトからの移行がある場合はさらに増えます。

  5. 公開後の保守

    月額で継続的に発生。見積書では別紙になっていることが多く、見落としやすい項目です。

相場は、オープンソースをベースにした構築で100万〜500万円、パッケージで500万円〜、フルスクラッチで500万円〜数千万円です。

構築費だけで比べない

見積もりを比較するときは、構築費ではなく公開後1年間の総額で並べてください。構築費が安くても月額保守が高く、1年で逆転するケースがあります。保守に何が含まれるのか(障害対応のみか、軽微な修正も含むのか)まで確認しておくと、あとで追加費用が出にくくなります。

見積もりを取るときに確認すること

複数社から見積もりを取ると、金額だけでなく項目の立て方も違います。同じ条件で比べられる状態にしてから並べてください。

見積書で必ず確認する項目

  • 保守費に何が含まれるか(障害対応のみか、軽微な修正も含むのか)
  • 公開後の修正は何回まで無償か、超えた場合の単価はいくらか
  • 商品登録は何点まで含まれるか、超過分の単価はいくらか
  • サーバー・ドメイン・SSLの費用は見積もりに含まれるか、別請求か
  • 納品後にソースコードやデザインデータを受け取れるか

最後の項目は特に重要です。データを受け取れない契約だと、別の会社に乗り換えるときに作り直しになります。 最初の見積もりが安くても、数年後に高くつく典型的なパターンです。

オープンソースで自社構築する場合

EC-CUBEなどのオープンソースはライセンス費用がかかりません。ただし無料なのはライセンスだけで、サーバーとドメインは自前で用意します。

レンタルサーバーは月1,100円前後(エックスサーバーのスタンダードプランの12か月契約で月1,100円、初期費用0円)、独自ドメインはサーバーの特典で無料になることもあります。つまりインフラだけなら年間1万3,000円程度で足ります。

問題はその先です。脆弱性が公表されたときの更新作業、決済モジュールの追加、バージョンアップ対応は自社の責任になります。社内に開発できる人がいなければ、結局その都度外注することになり、見積もりに現れない費用として積み上がります。

払った費用をどう会計処理するか

ここは意外と見落とされます。 構築費用を払ったあと、それを経費にできるのか、資産として計上して何年かに分けるのかで、その期の利益がまったく変わります。

判断の分かれ目はプログラムの作成費用が含まれているかどうかです。

ECサイト制作費用の会計処理の分かれ目 プログラムの作成費用が含まれる場合はソフトウェアとして資産計上し5年で減価償却する。含まれない場合は広告宣伝費として支払った期に経費にできる。ECサイトはカート機能を持つため前者にあたることが多い。 ECサイトの制作費用 プログラムの作成費用が含まれるか カート・受注管理・顧客管理などの機能 含まれる 含まれない ソフトウェア 無形固定資産として 資産計上し、原則5年で 減価償却する 広告宣伝費 支払った期に 全額を経費にできる ECサイトは多くがこちら ※判断は契約内容による。顧問税理士に確認してください

ECサイトはショッピングカートを持つ以上、プログラムの作成費用が含まれるのが普通です。 つまり多くの場合、広告宣伝費として一括で経費にするのではなく、ソフトウェア(無形固定資産)として資産計上することになります。

耐用年数は国税庁のタックスアンサーで定められています。

ソフトウェアの用途法定耐用年数
複写して販売するための原本、研究開発用3年
その他のもの(自社で使うECサイトはこちら)5年

出典は国税庁タックスアンサー No.5461「ソフトウエアの取得価額と耐用年数」です。

何が変わるのか

300万円でECサイトを作った場合で比べます。

広告宣伝費として処理できれば、その期に300万円を全額経費にできます。一方でソフトウェアとして資産計上すると、5年に分けて年60万円ずつ経費になります。

つまり同じ300万円を払っても、初年度に落とせる金額が5分の1になるということです。利益が出ている期にまとめて落としたいと考えていた場合、資金繰りの計算が狂います。

見積もりの段階で分けてもらう

制作費用のなかには、プログラムの作成にあたる部分とそうでない部分が混ざっています。見積書で項目が分かれていないと、全額をソフトウェアとして扱わざるを得なくなることがあります。デザイン制作費と実装費を分けて記載してもらえないか、発注前に相談しておくと後の処理が楽になります。

金額が小さい場合

取得価額が一定額を下回る場合には、資産計上せずに経費にできる特例があります。ただし適用期限や対象者の条件が年度ごとに見直されるため、ここでは金額基準を示しません。

この章は一般的な考え方です

実際の判断は契約内容や自社の状況によって変わります。会計処理は必ず顧問税理士に確認してください。この記事は税務アドバイスではありません。

見積書に出てこないのに必ず発生する費用

ここからは、当社が自社ブランドのECサイトを運営し、ギフトEC(PsyPre)を自社開発してきたなかで、実際に効いていると感じている費用です。どの見積書にも載っていませんが、必ず発生します。

商品写真と原稿です。 カートシステムがどれだけ高機能でも、写真と説明文は自分で用意する必要があります。外部に撮影を依頼すれば1商品あたり数千円から、自分で撮るなら機材と時間がかかります。商品点数が100を超えると、この工程が立ち上げの律速になります。

運用に入ってからの人件費です。 受注処理、問い合わせ対応、在庫調整、発送手配。1日10件なら片手間でも回りますが、100件になると専任に近い体制が必要になります。月額の数千円の差より、この工数の差のほうが金額としてはるかに大きくなります。

テストのための費用です。 公開前に実際に注文を通してみると、送料設定の抜けや決済の失敗パターンが見つかります。自分でテスト注文を入れれば決済手数料が実費で発生しますが、ここを省くと公開後に本番で発覚します。 数百円を惜しまずテストしてください。

ドメインとSSLです。 ASP型ではSSL証明書が標準で含まれていることがほとんどですが、独自ドメインは自分で取得します。取得費そのものは大きくありませんが、更新を忘れるとサイトが止まります。 自動更新の設定と、支払いに使うカードの有効期限は必ず確認してください。

乗り換えのための費用です。 最初に選んだカートが合わなくなったとき、移行には商品データと顧客データの作業に加えて、URL変更にともなう検索順位の落ち込みが発生します。金額に換算しにくい分、事前に見積もられることがありません。

予算別にできること

「いくらかかるか」の裏返しとして、予算からできることを逆算すると判断しやすくなります。

予算できること向いている状況
〜10万円ASP型を自分で設定。標準テンプレートで公開まず売れるかを検証したい
10〜100万円テンプレートをベースにデザインを調整。商品登録や写真撮影を外注見た目を整えて本格的に始めたい
100〜500万円オリジナルデザイン。オープンソースやASPへの機能追加既存事業があり、ブランドの世界観が必要
500万円〜外部システム連携、独自機能の開発基幹システムや実店舗との連携が必須

注目してほしいのは、いちばん上の段でも「公開して売ること」自体はできるという点です。10万円と500万円の差は、売れるかどうかではなく、どれだけ自社の要件に寄せられるかの差です。

だからこそ、要件がまだ固まっていない立ち上げ期に大きな予算を投じるのは合理的ではありません。何が必要かは、売ってみないと分からないからです。

年商に対して、いくらまでなら妥当か

金額そのものより、売上に対して何%を占めているかで見ると判断しやすくなります。先ほどの試算を比率に直すと次のようになります。

年商年間コスト(安い方)売上に対する比率
100万円約7.4万円約7.4%
500万円約22.1万円約4.4%
1,000万円約39.9万円約4.0%

売上が増えるほど比率は下がります。 固定費が売上に薄まるためです。逆に言えば、売上が小さいうちに固定費の高いプランを選ぶと、比率が跳ね上がります。

目安として、システム関連費(月額+決済手数料+販売手数料)が売上の8%を超えているなら、プランが合っていないと考えてよいと思います。年商100万円で月5万円のカートを使えば年60万円、売上の6割がシステム費になります。極端な例に見えますが、「将来を見越して」と高機能なプランを契約してしまうと、実際に起こります。

判断の基準

いま払っている(払おうとしている)年間コストを、想定年商で割ってみてください。8%を超えるなら、プランを一段下げるか、売上が追いつくまで待つのが妥当です。逆に4%を大きく下回っていて、しかも手作業で困っているなら、上のプランに上げて工数を買ったほうが得をします。

費用を抑えるための順序

安く作ることより、安く始めて必要になってから足すほうが結果的に安くなります。 具体的な順序は次のとおりです。

立ち上げ時に決めること・後回しにできること

  • 最初に決める:どのカートを使うか(乗り換えコストが大きいため)
  • 最初に決める:使いたい決済手段(カゴ落ちに直結するため)
  • 後回しでよい:デザインのカスタマイズ(標準テンプレートで公開できる)
  • 後回しでよい:オプション機能(必要になってから追加する)
  • 後回しでよい:外部ツール連携(売上が出てから考える)

デザインの作り込みは、売れることが確認できてからで間に合います。 標準テンプレートで公開して反応を見てから制作会社に依頼すれば、「何を直すべきか」が分かった状態で発注できるので、同じ金額でも効果が変わります。

補助金についても触れておきます。従来のIT導入補助金は2026年から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わっています。対象になるのは事前に登録されたITツールに限られ、枠や補助率も年度ごとに変わるため、検討している製品が対象かどうかは公式サイトのITツール検索で確認してください。

まとめ

ECサイトの構築費用について、整理すると次のとおりです。

  • 費用は「初期」「毎月」「売れたとき」の3つに分かれる。見落とされるのは3番目
  • 相場の幅が大きいのは、自分で作るか外注するかで100万円単位で変わるため
  • 自分で作るなら年商100万円で年7〜10万円程度。月額0円プランは月商10万円を超えると割高になる
  • 外注するなら構築費ではなく、公開後1年間の総額で見積もりを比較する
  • 写真・原稿・運用工数は見積書に載らないが必ず発生する
  • 金額より比率で見る。システム関連費が売上の8%を超えるならプランが合っていない
  • ECサイトの制作費はソフトウェアとして資産計上になることが多く、原則5年で償却する

金額の大小より、どこにお金を使うかの順序のほうが効きます。カートの選定と決済手段は最初に決め、デザインの作り込みは売れることが確認できてからで間に合います。