請求書発行システムとは:Excelとの違いは「送る」と「残す」
請求書発行システムは、請求書の作成・送付・保存をまとめて行うサービスです。いまはクラウド型が中心で、ブラウザやスマホから使います。クラウド請求書と呼ばれることもあります。
Excelやスプレッドシートとの違いは、作ったあとの工程にあります。
| 工程 | Excel・スプレッドシート | 請求書発行システム |
|---|---|---|
| 作成 | ひな型と計算式を自分で用意する | 取引先と品目を選び、金額を入れると計算される |
| 送付 | PDFにしてメールに添付するか、印刷して投函する | 画面からメール送付。郵送代行を頼める |
| 保存 | フォルダ分けやファイル名のルールを自分で決める | 発行した請求書が日付・金額・取引先で検索できる形で残る |
| 入金確認 | 通帳と請求書を見比べる | 入金ステータスの管理や、口座明細との照合ができるものがある |
差が大きいのは送付と保存です。作成だけならExcelでも十分にこなせます。しかし郵送の手間と、送った請求書の保存のルールは、システムを使わないと自分で用意することになります。
保存のルールは、インボイス制度と電子帳簿保存法で決まっています。次の章で、自作する場合に何を満たせばよいかを整理します。
Excelで自作する場合に満たす2つのルール
請求書を自作すること自体に問題はありません。ただし、次の2つのルールは自分で守る必要があります。
1. インボイスの記載事項
自社がインボイス発行事業者なら、取引先から求められたときにインボイス(適格請求書)を交付し、その写しを保存する義務があります。インボイスには次の6項目を書きます。
- 交付を受ける取引先の氏名または名称
- 売手の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引の内容(軽減税率の対象品目であればその旨)
- 税率ごとに区分した対価の合計額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
書類の名称は請求書でも納品書でも構いません。Excelのひな型に登録番号の欄と、税率ごとの合計額・消費税額の欄を足せば、自作でも満たせます。
2. 電子帳簿保存法の電子取引
請求書をPDFにしてメールで送ると、電子取引にあたります。国税庁は、請求書などの電子データを送付・受領した場合には、そのデータを一定の要件を満たした形で保存する必要があるとしています。受け取った側だけでなく、送った側にも保存の義務があります。
保存の要件は、大きく3つです。
| 要件 | 内容 | 自作で対応する方法の例 |
|---|---|---|
| 改ざん防止 | タイムスタンプ、訂正・削除の履歴が残るシステム、事務処理規程のいずれか | 国税庁のサンプルをもとに事務処理規程を作り、備え付ける |
| 見読性 | ディスプレイやプリンタで、データをすぐに確認・出力できる | パソコンとプリンタがあれば足りる |
| 検索 | 取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる | ファイル名を「日付_取引先_金額」にそろえる、索引簿を作る |
出典:国税庁「電子取引関係」/国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート」(令和6年11月)
検索の要件には緩和があります。2年前(前々期)の売上高が5,000万円以下で、税務調査のときにデータのダウンロードの求めに応じられるなら、検索の要件は不要です。
請求書が月に数通で、取引先も決まっているなら、自作でも十分に回せます。システムに切り替える目安は、通数が増えて保存のルールを守りきれなくなったときか、郵送の手間を減らしたいときです。請求書発行システムは、発行した請求書を検索できる形で自動で残すので、この2つをまとめて任せられます。
主要6サービスの料金・無料プラン・郵送代行
料金を公開している主要6サービスを比べました。料金を公開せず問い合わせで見積もるサービス(Bill Oneなど)は、この表に入れていません。
| サービス | 無料プラン | 有料の月額(最安) | 郵送代行(1通) | インボイス・電帳法 |
|---|---|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド請求書 | なし(1か月の無料トライアル) | 個人900円・法人2,480円(税抜・年払い) | 210円(税抜) | 対応と明記 |
| freee請求書 | あり(発行枚数・期間の上限なし) | 1,980円(税抜・年払い) | 料金ページに記載なし | 対応と明記 |
| Misoca | あり(請求書は月10通まで) | 年8,800円(税抜) | 210円(税抜・有料プラン) | 対応と明記 |
| board | なし(30日の無料お試し) | 1,200円(税抜) | 195円(税込・切手代込) | 対応と明記 |
| INVOY | あり(Freeプラン) | 980円(税込・月払い) | 別途費用(金額の記載なし) | 対応と明記 |
| 楽楽明細 | なし(無料トライアル環境あり) | 25,000円から(税抜)と初期費用100,000円 | 198円から(税抜・郵送費込) | 対応と明記 |
出典:マネーフォワード クラウド請求書(法人の料金・個人の料金・郵送代行の料金)/freee請求書(料金プラン・無料プラン)/Misoca(料金プラン)/board(boardのご利用料金について)/INVOY/楽楽明細(料金・郵送代行・インボイス制度・電帳法)
2026年10月26日時点の公式ページの記載です。税込・税抜は各社の表記に合わせています。マネーフォワード クラウド請求書は、個人向けが2026年12月、法人向けが2027年6月に料金体系の一部改定を予定していると案内しています。料金は改定されることがあるため、契約前に公式ページで確認してください。
請求書が月10通前後でメール送付が中心なら、まず無料プランで始めるのが合理的です。枚数の上限がないfreee請求書か、月10通まで無料のMisocaが候補です。郵送する取引先があり、確定申告や会計まで1つのサービスで済ませたい個人事業主は、マネーフォワード クラウド請求書のパーソナルミニ(年払いで月900円・税抜)から始められます。3人で使う法人で郵送代行も頼むなら、月額と郵送代行の単価がともに低いboardのBasic(月2,400円・税抜)が、次の章の計算でいちばん安くなりました。月に数百通を発行し、いまの帳票のレイアウトをそのまま使いたい企業は、導入支援のある楽楽明細が向いています。
マネーフォワード クラウド請求書:会計や確定申告とセットの料金
マネーフォワード クラウド請求書の料金は、会計や確定申告など、マネーフォワード クラウドの複数のサービスをまとめたプランの料金です。請求書の発行やメール送付自体には費用がかかりません。
| プラン | 年払い(月あたり) | 月払い | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| パーソナルミニ(個人) | 900円 | 1,280円 | 取引先の登録は15件まで |
| パーソナル(個人) | 1,280円 | 1,680円 | 取引先は無制限、毎月の自動作成 |
| ひとり法人(法人) | 2,480円 | 3,980円 | 利用者1名のみ |
| スモールビジネス(法人) | 4,480円 | 5,980円 | 請求書・会計は3名まで |
| ビジネス(法人) | 6,480円 | 7,980円 | 4名以上は1名300円で追加 |
金額はすべて税抜です。郵送代行は全プラン共通で1通210円(税抜)です。無料プランはなく、ビジネスプラン相当の機能を1か月無料で試せます。トライアルが終わっても、自動で有料プランに切り替わることはありません。
freee請求書:無料プランは発行枚数に上限がない
freee請求書の無料プランは、請求書・見積書・納品書・発注書・領収書を、枚数と期間の上限なく発行できます。6サービスのなかで、無料プランの発行枚数に上限がないと明記しているのはfreee請求書だけです。利用できる人数は1〜3人で、freee会計の契約がなくても使えます。
無料プランの制限は、定期請求(毎月の自動作成)が1件までであることと、一括発行が使えないことです。有料のスタンダードは月1,980円(年払い・税抜)で、一括でメール送付・郵送するときは送信料金が月4,750円から(年払い・税抜)加わります。郵送代行の1通あたりの金額は、料金ページに記載がありません。
Misoca:月10通までは無料、通数でプランを選ぶ
弥生のMisocaは、月に作成できる請求書の通数でプランが分かれます。見積書・納品書・領収書は、どのプランでも作成数に上限がありません。
| プラン | 年額(税抜) | 請求書の作成 |
|---|---|---|
| 無料プラン | 0円 | 月10通まで |
| プラン15 | 8,800円 | 月15通まで |
| プラン100 | 33,500円 | 月100通まで |
| プラン1000 | 114,000円 | 月1,000通まで |
プラン15とプラン100は、上限を超えても1通70円(税抜)で作成できます。郵送は有料プランの機能で、1通210円(税抜)です。納品書を同封すると1通30円(税抜)が加わります。有料プランは初年度を無償にするキャンペーンを行っており、2年目の更新前にキャンセルできます。
board:個人は月1,200円、郵送は切手代込みで195円
boardは、見積から請求までの案件管理を含めたサービスです。無料プランはなく、30日間の無料お試しがあります。月額はアカウント全体の料金で、1人あたりではありません。
個人事業主向けのPersonalは月1,200円(税抜)で、利用者は1名、法人は使えません。法人はBasic(3人まで・月2,400円)、Standard(15人まで・月4,900円)、Premium(50人まで・月7,900円)から選びます(いずれも税抜)。
郵送代行は、1通195円(税込・切手代込)で、事前に郵送チケットを購入して使います。1通に入れられるのは送付状を含めて6枚までです。
INVOY:無料で発行から受け取りまで
INVOYは、請求書の作成・発行に加えて、受け取った請求書のデータ化までを無料のFreeプランで使えます。有料のStandardプランは月980円(税込・月払い)、年払いなら年9,800円(税込)で、銀行口座の自動連携や資金繰り表が加わります。
郵送代行サービスもありますが、公式サイトには「別途費用がかかります」とあるだけで、1通あたりの金額は書かれていません。郵送が多い場合は、事前に金額を確認してください。
楽楽明細:大量発行と既存レイアウトの再現向け
楽楽明細は、販売管理システムなどから出力したCSVやPDFを取り込み、請求書をまとめて発行するサービスです。料金は初期費用100,000円と月額25,000円から(いずれも税抜)で、月額は発行件数とオプションで変わります。詳しい料金表は資料請求で受け取る形です。
郵送代行は1通198円から(税抜)で、郵送費・封筒代・紙代・印刷費・作業手数料をすべて含みます。封入枚数やカラー印刷で金額は変わります。初期費用には、専任の担当者による2か月間の導入支援が含まれます。
年間費用を決めるのは郵送の通数
請求書発行システムの費用は、月額と郵送代行の費用の合計です。郵送する通数が多いと、月額より郵送代行の費用のほうが大きくなります。2つの例で年間費用を計算しました。
金額は、税抜の料金に消費税10%を足した税込で比べています。マネーフォワード クラウド請求書は年払いの料金で計算しています。
例1:個人事業主・月20通のうち5通を郵送
| サービス・プラン | 月額の年間分 | 郵送代行(年60通) | 年間費用(税込) |
|---|---|---|---|
| マネーフォワード クラウド請求書 パーソナルミニ | 11,880円 | 13,860円 | 25,740円 |
| board Personal | 15,840円 | 11,700円 | 27,540円 |
| Misoca プラン15+超過分 | 14,300円 | 13,860円 | 28,160円 |
| freee請求書 無料+自分で投函 | 0円 | 切手代6,600円 | 6,600円 |
計算の条件は次のとおりです。
- マネーフォワード クラウド請求書:パーソナルミニの年払い10,800円(税抜)。取引先が15件以内の前提
- board:Personalの月1,200円(税抜)の12か月分。郵送は1通195円(税込)
- Misoca:プラン15の年額8,800円に、月15通を超える5通分の1通70円を足した額(税抜)。プラン100(年33,500円)より安くなる
- freee請求書:無料プランで作成し、郵送する5通は自分で印刷して投函。定形郵便物(50g以内)の110円で計算し、封筒と印刷の費用は含めていない
月20通程度なら、有料サービスの差は年に数千円です。郵送が月5通なら、無料プランで作って自分で投函するほうが年2万円近く安くなります。印刷・封入・投函にかかる時間を、1通あたり約200円で外に出すかどうかで決めてください。
例2:法人・3人で月100通のうち30通を郵送
| サービス・プラン | 月額の年間分 | 郵送代行(年360通) | 年間費用(税込) |
|---|---|---|---|
| board Basic | 31,680円 | 70,200円 | 101,880円 |
| Misoca プラン100 | 36,850円 | 83,160円 | 120,010円 |
| マネーフォワード クラウド請求書 スモールビジネス | 59,136円 | 83,160円 | 142,296円 |
| 楽楽明細 最低料金(1年目) | 440,000円 | 78,408円から | 518,408円から |
楽楽明細の月額の年間分は、初期費用100,000円と月額25,000円の12か月分の合計を税込にした額です。2年目以降は初期費用がなくなり、408,408円からになります。マネーフォワード クラウド請求書のスモールビジネスは、会計や経費精算の機能も含んだ料金です。
郵送代行の費用は、どのサービスでも年間費用の6割近くから7割を占めます。月額の安いサービスを探すより、郵送の通数を減らすほうが費用は下がります。30通のうち20通をメール送付に切り替えられれば、郵送代行の費用は年に5万円前後減ります。
自分で投函する場合の切手代は年39,600円で、郵送代行より3万〜4万円ほど安く済みます。ただし30通を毎月印刷して封入するには、それなりの時間がかかります。その時間の人件費と比べて決めてください。
インボイス制度と電子帳簿保存法:システムで楽になること
6サービスはいずれも、インボイス制度と電子帳簿保存法への対応を公式に掲げています。システムを使うと、自作の場合に自分で用意していた次の作業が不要になります。
- 登録番号を設定しておけば、毎回の請求書に載せられる
- 8%と10%の品目が混ざっても、税率ごとの合計額と消費税額が自動で計算される
- 発行した請求書が日付・金額・取引先で検索できる形で保存される
- 電子帳簿保存法の要件に沿った保存の仕組みが用意されている
ただし、システムが代わりに判断してくれないこともあります。自社がインボイス発行事業者として登録するかどうかは、取引先が課税事業者か免税事業者か、自社の売上規模などで決まります。取引先から登録番号入りの請求書を求められているかを、先に確認してください。
関連記事BtoB向けECカート比較|卸の受注を始める費用と掛け払い
受け取る側の請求書は別のシステムになることがある
請求書のシステムには、自社が発行する請求書を扱うものと、取引先から受け取った請求書を扱うものがあります。Bill Oneのように受け取り側を主にしたサービスもあるため、比較するときはどちらの用途かを確認してください。
この記事の6サービスは、発行が中心です。INVOYは、受け取った請求書のデータ化と保存にも無料で対応しています。freee請求書は、freee会計と組み合わせると、受け取った請求書や領収書をスマホで撮影して保存できます。
選び方:発行通数・郵送の割合・会計ソフトで決める
ここまでの料金から、選ぶ順番を3つの問いにまとめました。
月に何通の請求書を出すか
月10通前後なら無料プランで足ります。freee請求書は通数の上限がなく、Misocaは月10通までです。月100通を超えるなら、Misocaのプラン1000や楽楽明細のように大量発行を前提にしたプランを見ます。
そのうち何通を郵送するか
郵送が月数通なら自分で投函しても負担は小さく、無料プランと組み合わせられます。郵送が多いなら、1通あたりの単価を比べます。boardは切手代込みで195円(税込)、マネーフォワード クラウド請求書とMisocaは210円(税抜)です。
どの会計ソフトを使っているか
請求書のデータは売上の仕訳になります。同じ会社の会計ソフトと組み合わせると、仕訳が自動で連携されます。freee会計ならfreee請求書、マネーフォワード クラウド会計ならマネーフォワード クラウド請求書、弥生会計ならMisocaが、まず候補に挙がります。
会計ソフトをまだ決めていない個人事業主は、請求書と会計を同じ会社でそろえると、確定申告までの作業がつながります。マネーフォワード クラウド請求書の個人向けプランは、確定申告の機能も含んだ料金です。
関連記事個人事業主の会計ソフトおすすめ4選|ネットショップの売上連携で比較
導入前に試すこと
どのサービスも、無料プランか無料の試用期間があります。契約の前に、次の3つを実際の取引先で確かめてください。
試用期間に確かめること
- いまの請求書と同じ項目(振込先・支払期限・備考)を載せられるか
- 取引先にメールで送り、PDFが問題なく開けるか、紙が必要と言われないか
- 会計ソフトに売上の仕訳が正しく連携されるか
紙の請求書を求める取引先には、切り替えの前にメール送付で受け取れるかを聞いておくと、郵送の通数を減らせます。郵送の通数が減るほど、どのサービスを選んでも年間費用は下がります。
まとめ
請求書発行システムを選ぶときに確認すること
- 月の発行通数が無料プランの範囲に収まるか。freee請求書は上限なし、Misocaは月10通まで
- 郵送する通数と、郵送代行の1通あたりの単価。195〜210円前後が目安
- 月額が税抜か税込か、年払いか月払いか
- 使っている会計ソフトと仕訳を連携できるか
- 登録番号と税率ごとの消費税額を載せた請求書を出せるか
- メールで送った請求書を、日付・金額・取引先で検索できる形で残せるか
請求書発行システムの費用は、月額より郵送の通数で決まります。まず月の発行通数と郵送の通数を書き出し、無料プランで足りるかを確かめてから、この記事の表に当てはめて比べてください。