運営の仕事は「注文数に比例するか」で2つに分かれる

ネットショップ運営の仕事は、注文数に比例して増えるものと、注文数に関係なく発生するものに分かれます。一人で回せるかどうかは、前者の量でほぼ決まります。

仕事注文数との関係主な中身
受注・入金の確認比例する注文内容の確認、入金待ちの管理、キャンセル対応
梱包・発送比例するピッキング・梱包・送り状の作成・追跡番号の連絡
問い合わせ対応比例する配送状況の確認、返品・交換の受付、商品の質問
在庫管理一部比例する在庫数の更新、欠品と再入荷の表示
商品登録比例しない撮影、説明文の作成、価格と送料の設定
集客比例しないSNS投稿・広告・メール配信・検索対策
売上・経費の管理比例しない売上の集計、経費の記帳、入金の照合
仕入れ・製作商材による発注、製作、検品

注文数に比例する作業は、売れるほど増えます。忙しくなるのは売れているときで、改善に手を付ける余裕がなくなる時期と重なります。逆に商品登録や集客は、売上がゼロでも同じだけ時間がかかります。開業直後に時間を取られるのはこちらです。

同じ「運営が大変」でも、どちらの作業で時間を失っているかで打つ手が変わります。比例する作業はツールや外注で減らせます。比例しない作業は、ショップの中身そのものなので外に出しにくい作業です。

ネットショップ運営の仕事内容8つ

上の表の8つを、それぞれ何をするのか、どこで時間がかかるのかに絞って説明します。

1. 商品登録

商品写真の撮影と加工、説明文の作成、価格・在庫数・送料の設定を行います。運営の仕事のなかで、1件あたりの時間が最も長い作業です。当社の自社ブランドのECでは、商品写真と説明文に1商品あたり2時間かけています。

一度作れば何度でも売れるので、時間をかける価値があります。そのかわり、新商品を月に何点出すかで作業時間が大きく変わります。

2. 集客

SNSへの投稿・広告の運用・メールやLINEでの配信・検索エンジン向けの記事作成などです。公開しただけでは訪問者は来ないため、開業直後は運営時間の多くをここに使うことになります。

集客は「やればやるほど効く」作業ではなく、効く施策を見つけるまで試行錯誤が続きます。時間を区切って取り組まないと、ほかの作業を圧迫します。

3. 受注・入金の確認

注文が入ったら内容を確認し、決済の完了を確かめます。クレジットカード決済なら自動で確定しますが、銀行振込やコンビニ決済を用意している場合は、入金を待ってから発送に進みます。入金がないまま期限を過ぎた注文のキャンセルもここに含まれます。

4. 在庫管理

売れた分の在庫を減らし、仕入れや製作で増えた分を足します。ネットショップだけで売っているなら、カートが自動で在庫を減らすため手間は小さく済みます。実店舗やモールと在庫を共有し始めると、数のずれが起きやすくなります。売り越しは謝罪とキャンセルの対応を生むため、販路を増やすときは在庫の持ち方を先に決めておきます。

5. 梱包・発送

商品を棚から取り出し、梱包し、送り状を作って発送します。発送したら追跡番号をお客さまに知らせます。注文1件ごとに必ず発生するため、件数が増えたときに最初に時間を圧迫する作業です。次の章で、件数別にかかる時間を計算します。

6. 問い合わせ対応

「いつ届くか」「サイズを交換したい」「届いた商品が違う」といった連絡に答えます。件数は注文数に比例しますが、1件あたりの時間は内容によって大きくぶれます。返品や交換のルールを決めていないと、1件ごとに判断が必要になり時間が膨らみます。

7. 売上・経費の管理

売上の集計、手数料や送料などの経費の記帳、カート会社からの入金の照合を行います。月に一度まとめて行えば済む作業ですが、溜めると確定申告の前に一度に負担が来ます。

8. 仕入れ・製作

仕入れ商品なら発注と検品、ハンドメイドや自社製造なら製作そのものです。商材によって時間がまったく違うため、この記事の計算からは外しています。自分の商材で何時間かかるかを別に見積もってください。

発送の作業時間は、注文数でどこまで増えるか

注文数に比例する作業のうち、時間を見積もりやすいのが発送です。当社の自社ECでは、発送作業に1件あたり5分ほどかかっていました。この数字で月の作業時間を計算すると次のようになります。

発送1件5分で計算した、月の注文数ごとの発送時間月30件なら2.5時間、月100件なら約8.3時間です。月300件なら25時間、月600件なら50時間になります。1日あたりに直すと、月300件で1日10件、約50分です。1件5分で計算した月の発送時間月30件2.5時間1日1件ほど。片手間で回る月100件約8.3時間1日3〜4件。毎日20分弱が発送に消える月300件25時間1日10件。毎日50分。副業の時間をほぼ使い切る月600件50時間1日20件。発送だけで週12時間ほど受注確認・問い合わせ・在庫更新は含まない実際の比例作業はこれより多くなる

5分という数字は小さく見えますが、毎日発生するので積み上がります。月300件は1日10件ほどで、それだけで毎日50分を発送に使います。ここに受注確認と問い合わせ対応が加わります。

当社でも、発送が100件に達したところで回らなくなりました。1件あたりの時間が短くても、件数が一定を超えると「時間が足りない」ではなく「ほかの作業ができない」という形で限界が来ます。商品登録や集客に使うはずの時間が、発送に置き換わっていくためです。

商品登録は、件数ではなく新商品の数で増える

商品登録は注文数とは関係なく、新商品を何点出すかで決まります。1商品2時間で計算すると次のとおりです。

新商品の数商品ページの制作時間
月2点4時間
月5点10時間
月10点20時間
開業時に30点60時間

開業前の30点で60時間かかるという計算は、立ち上げの時期を見積もるときに効いてきます。週10時間しか使えない副業なら、商品ページだけで1か月半です。公開日から逆算して、撮影と原稿をいつから始めるかを決めてください。

数字の前提

発送1件5分と商品ページ1点2時間は、当社が自社ブランドのECを運営するなかでの実測です。商材の大きさ、梱包の手間、写真の点数によって変わります。自分の数字に置き換えて計算してください。

副業で回せる注文数を逆算する

副業でネットショップを運営する場合、先に決まっているのは使える時間です。そこから逆算すると、回せる注文数の上限が出ます。

計算式

回せる注文数 =(月に使える時間 − 商品登録の時間 − 集客・経理などの固定作業の時間)÷ 1件あたりの比例作業の時間

週10時間使える人で計算してみます。月に直すと約40時間です。

  1. 月に使える時間を出す

    週10時間なら、月およそ40時間です。

  2. 商品登録の時間を引く

    新商品を月2点、1点2時間なら4時間です。残りは36時間になります。

  3. 固定作業の時間を引く

    集客・経理・サイトの手入れに使う時間を自分で決めます。ここでは仮に16時間とします。残りは20時間です。

  4. 1件あたりの時間で割る

    比例作業を1件5分とすると、20時間は1,200分なので240件です。

この条件なら、月240件が上限という計算になります。ただし5分は発送だけの時間で、受注確認や問い合わせを含めると1件あたりの時間は延びます。1件10分なら上限は月120件に下がります。

この計算で分かるのは、注文が伸びるほど集客に使える時間が減るという構造です。上限に近づいたら、比例作業を減らす手を打たないと売上はそこで止まります。

月収は「時給」に直して判断する

ネットショップ運営の月収は、売上から原価・手数料・送料を引いた残りです。年商100万円のショップで手元に残る額は、ネットショップ開業の失敗パターンの記事で試算しています。客単価5,000円・原価率40%などの前提で、広告費などを引く前の残りは年42.6万円です。

月あたりでは約3.6万円になります。これを運営にかけた時間で割ると、時給が出ます。

月の運営時間時給に換算すると
月10時間約3,550円
月20時間約1,775円
月30時間約1,183円
月40時間約888円

同じ年商100万円でも、かける時間で時給は4倍変わります。年商100万円は年200件、月に17件ほどです。発送だけなら月1.4時間ほどで済むため、時間の大半は商品登録と集客に使っていることになります。

月収の額だけを見ると、売上を伸ばすことが答えに見えます。しかし時給で見ると、同じ売上をより短い時間で回すことにも同じ価値があります。ここに広告費や撮影機材の費用が乗ると、時給はさらに下がります。

運営に必要なスキルは、どの作業を自分でやるかで決まる

ネットショップの運営に資格は要りません。必要なスキルは、8つの作業のうちどれを自分でやるかで決まります。

スキル使う作業足りないときに起きること
写真撮影と文章商品登録訪問者が来ても買われない。商品の良さが伝わらない
集客の知識集客ショップに訪問者が来ない
数字を読む力売上・経費の管理、仕入れ売れているのに利益が残らない理由が分からない
文面で説明する力問い合わせ対応同じ質問が繰り返し届き、対応時間が減らない
段取り受注・発送、在庫管理発送の遅れや売り越しが起きる

注文数に比例する作業に必要なのは、主に段取りです。手順が決まっているので、ツールや外注に置き換えやすい作業でもあります。

一方で、写真と文章、集客、数字を読む力は、注文数に比例しない作業で使います。売上を左右するのはこちらで、外に出すとショップの中身が自分の手から離れます。一人で運営するなら、限られた時間をこの3つに寄せられるように、比例作業を早めに軽くしておくのが基本の考え方です。

問い合わせ対応は、文面の力でかかる時間が変わります。よく来る質問の答えを商品ページやよくある質問に書いておくと、問い合わせそのものが減ります。返信を速くするより、質問されない商品ページを作るほうが時間の節約になります。

副業と専業で、1週間の回し方が変わる

運営の仕事を毎日すべてこなす必要はありません。毎日やる作業と、まとめてやる作業を分けると、副業でも回せます。

頻度作業副業での置き方の例
毎日受注確認、問い合わせへの返信朝か夜に15分。返信は24時間以内を目安にする
週2〜3回梱包・発送発送日を決めて商品ページに書いておく
週1回商品登録、SNS投稿の作り置き週末にまとめて撮影し、原稿を書く
月1回売上・経費の記帳、在庫の棚卸し月初に前月分をまとめて処理する

副業でいちばん効くのは、発送日を決めて商品ページに書いておくことです。「ご注文から3営業日以内に発送」と書いておけば、毎日発送しなくても約束を守れます。発送をまとめて行うと、梱包材を出したりしまったりする時間も減ります。

専業になると、発送を毎日にして到着を早めるほうが購入率に効きます。そのかわり発送の時間が毎日発生するので、比例作業を減らす手段を早めに用意しておく必要があります。

一人運営の限界が来たときの3つの選択肢

注文数に比例する作業が使える時間を超えたら、減らす手を打ちます。選択肢は大きく3つです。

選択肢減らせる作業向いている段階注意点
ツールで自動化する送り状の作成・追跡番号の連絡・発送通知・在庫の連携比例作業が使える時間を超え始めたときカートによって標準でできる範囲が違う
発送代行に出す保管・梱包・発送商品の形が揃っていて件数が多い在庫を預けるため、入出庫の費用がかかる
運営代行に出す商品登録・受注処理・問い合わせ・集客運営の人手そのものが足りない任せた業務のノウハウが手元に残りにくい

最初に検討するのは自動化です。送り状の作成や追跡番号の連絡は、注文データを転記しているだけの作業です。手作業で続けるほど、件数に比例して時間とミスが増えます。当社がShopify向けの発送アプリ(TimePort)を作ったきっかけも、こうした転記の手作業が手間だったことでした。

自動化でどこまで減らせるかは、使っているカートの標準機能とアプリの有無で決まります。カートを選ぶ段階で、注文が増えたときに何が自動化できるかを確認しておくと、あとから乗り換える手間を避けられます。

運営代行は、商品登録や集客まで含めて任せられる反面、注文数に比例しない作業まで外に出すことになります。商品ページや集客はショップの中身そのものです。全部を任せる前に、比例作業だけを減らせないかを先に検討してください。

運営で揉めないために、先に決めておくルール

問い合わせ対応の時間を左右するのは、件数より「1件ごとに判断が必要かどうか」です。判断が必要な問い合わせの多くは、返品と送料の扱いです。

通信販売の返品には法律上のルールがあります。特定商取引法の第15条の3は、広告に返品特約を表示していない場合のルールを定めています。お客さまは商品を受け取った日から8日以内なら、送料を自己負担して返品できます。返品を受けない、あるいは条件を付けるなら、その内容を広告に表示しておく必要があります。

出典:消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売」

返品特約は特定商取引法に基づく表記に載せる事項の1つです。開業時に表記を作るときに、あわせて次を決めて文面にしておきます。

開業前に文面にしておくこと

  • 返品を受けるか。受けるなら何日以内か
  • お客さま都合の返品と、不良品・誤配送の場合で送料をどちらが負担するか
  • 受取拒否や長期不在で戻ってきた荷物の扱い
  • 発送までの日数と、発送日(毎日か、曜日を決めるか)
  • 問い合わせへの返信の目安時間

決めておけば、問い合わせへの返答は文面を案内するだけになります。決めていないと1件ごとに悩み、お客さまによって対応がぶれます。ぶれた対応は、あとから「前の人はこうしてもらえた」という形で返ってきます。

副業で運営するときの税金と手続き

会社員が副業でネットショップを運営する場合、確定申告の要否は所得で決まります。国税庁の案内では、給与を受けている人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。

出典:国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人

ここでいう所得は、売上ではありません。売上から原価や手数料、送料などの経費を引いた額です。経費を記帳していないと所得が計算できないため、月1回の記帳は申告のためにも必要な作業になります。

開業届や青色申告承認申請書の期限は、個人向けのネットショップ開業ガイドにまとめています。勤務先の就業規則で副業が認められているかも、始める前に確認してください。

まとめ

ネットショップ運営の負担は、仕事の種類ではなく注文数で決まります。

  • 運営の仕事は、注文数に比例する作業(受注・発送・問い合わせ)と比例しない作業(商品登録・集客・経理)に分かれる
  • 発送1件5分で計算すると、月100件で約8時間、月300件で25時間になる
  • 商品ページは1点2時間で、開業時に30点なら60時間かかる
  • 副業で回せる注文数は、使える時間から固定作業を引き、1件あたりの時間で割って出す
  • 月収は時給に直すと判断しやすい。年商100万円でも、月20時間なら約1,800円、月40時間なら約900円
  • 件数が増えたら、まず比例作業を自動化で減らす。運営代行は比例しない作業まで外に出すことになる
  • 返品と送料のルールは開業前に文面にしておく

運営を始める前に、自分が週に何時間使えるかを決めてください。その時間と1件あたりの作業時間が分かれば、何件まで一人で回せるかは計算で出せます。