越境ECとは、海外の消費者にネットで直接売ること

越境ECとは、インターネットを通じて海外に住む消費者に商品を売ることです。読み方は「えっきょうイーシー」で、英語ではCross-border e-commerceといいます。商品を売る相手が国境の外にいる、という点だけが国内のECと違います。

一般的な貿易との違いは、取引の相手です。貿易は日本の輸出者と海外の輸入者が企業どうしで取引し、商品はまとめて運ばれます。越境ECは、ネットショップが海外の個人から1件ずつ注文を受けて届けます。

相手が海外にいることで、国内のECとは次の5つが変わります。

項目国内のEC越境EC
サイトの言語日本語英語や相手国の言語
通貨と決済円。国内のカードやコンビニ払い現地通貨での表示。海外発行のカードや現地の決済手段
配送国内の宅配便国際郵便や国際宅配便。送れない品物がある
税金売上に消費税がかかる相手国で関税がかかる。輸出した売上は消費税が免除される場合がある
規制と商習慣日本の法律相手国の輸入規制や表示ルール

ネットショップの仕組みそのものは国内と同じです。カートや決済の基本はECカートとはで解説しています。

日本の店は、海外から買う額の約9.6倍を売っている

経済産業省の調査によると、2024年に中国の消費者が日本の事業者から越境ECで買った額は2兆6,372億円でした。米国の消費者が日本の事業者から買った額は1兆5,978億円です。

日本・米国・中国の間の越境EC購入額(2024年)中国の消費者が日本の事業者から買った額は2兆6,372億円、米国の消費者が日本の事業者から買った額は1兆5,978億円。日本の消費者が米国と中国の事業者から買った額は合計4,410億円で、日本から売った額のほうが約9.6倍大きい。誰が、どこの店から買ったか2024年・越境ECの購入額中国の消費者 → 日本の店2兆6,372億円米国の消費者 → 日本の店1兆5,978億円日本の消費者 → 米国・中国の店4,410億円

反対に、日本の消費者が米国と中国の事業者から買った額は合計4,410億円です。日本から米国と中国に売った額は合わせて4兆2,350億円です。日本の店が売っている額は、日本の消費者が買っている額の約9.6倍です。日本の商品を海外から買いたい人が、それだけ多いということです。

同じ報告書は、訪日旅行と越境ECのつながりにも触れています。2024年の訪日客は、中国から約698万人、米国から約272万人でした。報告書が引用する民間の調査では、旅行中に気に入った商品を帰国後に越境ECで買い直した人は44.0%です。買い直した理由でいちばん多いのは「自国で買えないため」でした。店頭で外国人のお客さまが買っていく商品は、越境ECでも売れる候補になります。

出典:経済産業省(令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました)/経済産業省(令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書)

この調査が推計しているのは日本・米国・中国の3か国の間だけです。ほかの国への売れ行きは含まれていません。どの国に売るかは市場の大きさだけでなく、次の3つで絞り込みます。

  • 自分のショップに、すでにその国からのアクセスや問い合わせがあるか
  • 売りたい商品を、その国に送れるか(相手国の禁制品にあたらないか)
  • 国際送料を足しても、現地で買える価格に収まるか

越境ECのメリットとデメリット

越境ECの利点は、店舗を海外に構えずに海外の客に売れることです。一方で、国内向けにはなかった費用と手間が増えます。

メリット

  • 現地法人や実店舗なしで、海外の客に売れる
  • 国内の人口が減っても、売る先を増やせる
  • 日本の商品を探している海外の客に届く
  • 国内向けのネットショップをそのまま使える方法がある

デメリット

  • 国際送料が高く、価格で不利になりやすい
  • 海外カードや通貨の両替で、手数料が国内より上がる
  • 相手国ごとに送れない品物や規制が違う
  • 問い合わせや返品に、外国語で対応する必要がある

デメリットのうち、送料・手数料・外国語対応は、売り方の選び方でかなり変わります。次の章で売り方を比べます。

越境ECの売り方は6つ、小さく始めるなら3つから選ぶ

経済産業省の調査は、越境ECの事業モデルを6つに分けています。

事業モデル内容
国内自社サイト日本にある自社のネットショップを多言語化して、海外に直送する
国内ECモール等への出店越境ECに対応した国内のモールなどに出店し、国内向けの延長で海外に売る
相手国ECモール等への出店相手国のECモールに出店する。代行会社の支援を受けることが多い
保税区活用型相手国の保税区の倉庫に商品を先に送っておき、注文後にそこから届ける。中国向けで使われる
一般貿易型貿易の手続きで相手国の輸入者に卸し、相手国のECで売ってもらう
相手国自社サイト相手国に自社サイトを作る。現地で商品が知られていることが前提になる

出典:経済産業省(令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書)

下の3つは、相手国の倉庫や輸入者、現地での知名度が前提です。個人や小さな店が最初に選ぶのは、上の3つのどれかです。3つの違いは、海外への発送を誰がするかにあります。

小さく始める3つの売り方と、海外への発送を担う人自社サイトでは、ショップが海外の購入者に直接国際配送する。国内サービスの海外販売機能(購入代行型)では、ショップは国内の代行事業者に送り、代行事業者が海外に発送する。海外モールでは、ショップが商品を現地の倉庫に先に送り、注文後は現地で配送される。①自社サイト(Shopifyなど)ショップ国際配送海外の購入者発送・関税の条件・英語対応はショップが行う②国内サービスの海外販売機能ショップ代行事業者海外の購入者国内配送国際配送ショップは国内に送るだけ。例:BASEのかんたん海外販売③海外モールへの出店ショップ現地の倉庫海外の購入者事前に輸送現地配送在庫を先に送る。モールとの交渉や納品の手続きが要る

①の自社サイトは、価格や見せ方を自分で決められます。そのかわり、発送と関税の条件、英語での問い合わせ対応を自分で引き受けます。②は、国内のネットショップのまま海外の注文を受けられる方法です。③は、モールの集客力を使える一方で、在庫を先に現地へ送る必要があります。

国内のネットショップサービスのうち、海外に売る機能があるものはハンドメイド販売サイト比較でも比べています。

「越境EC代行」は3種類あり、払う人と手間が違う

「越境EC代行」という言葉は、性質の違う3つのサービスをまとめて指しています。まず、手数料を払うのが購入者かショップかで分かれます。

種類何を代行するかショップの作業費用を払う人
購入代行(転送)型海外の購入者に代わって日本の店で買い、海外に転送する国内の倉庫に発送するだけ主に購入者。ショップ側にも利用料がかかる場合がある
販売代行型海外モールへの出品・受注・発送などをまとめて請け負う商品を代行会社に納めるショップ
運営代行型自社の越境ECサイトの構築や集客・運用を請け負う方針と商品の判断ショップ

購入代行型の代表が、BASEの「かんたん海外販売」です。海外への発送は代行事業者のwant.jp株式会社が行い、ショップは国内に発送するだけで済みます。ショップ側の基本利用料は無料で、売上の5%が利用料として引かれます。

購入者の側には、商品代金と国内送料の合計の10%(下限500円・上限3,000円)の代行手数料がかかります。加えて海外送料と、支払額の2〜3%の決済手数料も購入者が払います。ショップの手間が少ないぶん、海外の購入者が払う総額は高くなります。5,000円の商品なら、代行手数料だけで500円が上乗せされます。

なお、かんたん海外販売では、海外に売る商品をショップが選べません。AIの自動判定で販売できないとされた商品は、海外の購入者が買えなくなります。

出典:BASE(かんたん海外販売について教えてください)

3種類は、向いている店がはっきり分かれます。

  • 購入代行型は、海外から注文が来るかまだ分からない店に向いています。固定費がかからず、国内向けの作業を変えずに試せます
  • 販売代行型は、海外モールで売りたいが、出店の交渉や外国語の対応を自社で持てない店に向いています。商品を預けるため、在庫に余裕があることが前提です
  • 運営代行型は、自社サイトで売る方針が決まっていて、作る人手が足りない店に向いています。売上が立つ前から費用がかかるため、予算を先に決めておきます

販売代行と運営代行の費用は、契約ごとに決まります。決まった相場はないため、見積もりを取るときは次の項目が分かれているかを確認します。

代行会社の見積もりで確認すること

  • 初期費用と月額の固定費
  • 売上に対する成果報酬の料率と、その計算の元になる金額
  • 国際送料・倉庫の保管料・関税の立て替えが、誰の負担か
  • 返品や問い合わせの対応が、料金に含まれているか
  • 解約したとき、商品ページや顧客のデータを引き取れるか

越境ECの手数料は、売り方で2倍以上変わる

海外の購入者から5,000円の注文を受けたときに、ショップの売上から引かれる額を比べます。国内送料は0円として計算しています。

売り方引かれるもの5,000円の注文で引かれる額
Shopify Basic(円で販売)海外カードの決済手数料3.9%195円(3.9%)
Shopify Basic(現地通貨で販売)海外カード3.9%+通貨両替手数料2%295円(5.9%)
BASE スタンダード+かんたん海外販売決済手数料3.6%+40円、サービス利用料3%、海外販売利用料5%620円(12.4%)
BASE グロース+かんたん海外販売決済手数料2.9%、海外販売利用料5%395円(7.9%)

注文ごとに引かれる額は、ShopifyのBasicで現地通貨を使っても、BASEのスタンダードの半分以下です。ただし月額の固定費が違います。ShopifyのBasicは年払いで月3,650円、月払いで4,850円かかります。BASEのスタンダードは月額0円で、グロースは年払いで月16,580円です。

Shopifyの通貨両替手数料は、お客さまが円以外の通貨で払ったときにかかります。自動の為替レートでも、手動でレートを決めても同じです。返金しても、両替手数料とカードの決済手数料は戻りません。

当社も自社ブランドのShopifyサイトを運営していて、Shopifyの手数料は想定より大きいと感じました。越境ECでは、そこに為替の手数料も加わります。海外向けの価格は、国内向けの価格に送料を足すだけでなく、この差を見込んで別に決めます。

月に数件の海外注文を試すなら、固定費0円のBASEのかんたん海外販売で反応を見られます。海外の注文が毎月続くようになったら、1件あたりの手数料が低い自社サイトのほうが、手元に残る額は大きくなります。

出典:Shopify(料金プラン)/Shopify(手数料と費用)/BASE(料金・手数料)

ShopifyはBasicプランから、ストアの翻訳・現地通貨での価格表示・現地のドメインの割り当て・関税と税金の見積もりと徴収の機能があります。現地通貨の表示と現地の決済手段には、Shopifyペイメントの利用が条件です。

関税は相手国の税金、消費税は輸出なら免除される

越境ECでは、2つの税金の扱いが国内と変わります。相手国でかかる関税と、日本の消費税です。

関税を誰が払うかは、配送の条件で決まる

関税は、商品を受け取る国でかかる税金です。受取人が受け取るときに払う形と、差出人が先に払う形(DDP)があります。BASEのかんたん海外販売では、関税は購入者の負担で、ショップは対応する必要がありません。

米国宛ては、2026年に入って扱いが変わっています。米国政府は2025年8月29日から、国際郵便物の免税措置を停止しました。日本郵便は一時、内容品価格が100USドルを超える販売品などの米国宛て郵便の引き受けを止めていました。

2026年4月14日からは、差出人が事前に関税を払うことを条件に、指定の郵便局で引き受けを再開しています。内容品価格が800USドル以下の販売品は、日本郵便が推奨する認定事業者のアプリで、差出人が関税などを米国税関に払います。認定事業者は発表時点でZonos社だけで、アプリの利用料が別にかかります。

米国に郵便で送るなら、関税を価格に含める

関税を差出人が先に払う以上、その分を商品価格か送料に含めておかないと利益が削られます。条件は変わることがあるため、発送前に日本郵便の最新の案内を確認してください。

出典:日本郵便(米国宛て郵便物の引受再開について)

自分で輸出した売上は、消費税が免除される

課税事業者が国内から輸出した売上は、輸出免税の対象になり消費税がかかりません。条件は、輸出したことを証明する書類を7年間保存することです。

郵便物の場合、証明に使う書類は1個あたりの価額で変わります。20万円以下の小包郵便物やEMSなら、日本郵便の引受証明書類と発送伝票の控えなどです。20万円を超えると、税関の輸出許可書が必要です。

購入代行型では、ショップが商品を送る先は国内の代行事業者の倉庫です。ショップ自身が輸出するわけではないため、輸出の証明書類はショップの手元に残りません。どう申告するかは、税理士か税務署に確認してください。

出典:国税庁(No.6551 輸出取引の免税)

越境ECで起きやすいトラブルと、先にしておく備え

越境ECのトラブルは、売った後に起きます。国内なら電話一本で済むことが、海外では時間も費用もかかります。売り始める前に、次の4つに備えておきます。

返品と返金で、手数料が戻らない

Shopifyでは、返金してもカードの決済手数料と通貨両替手数料は戻りません。海外の返品は、国際送料をかけて送り返してもらうことになります。返品を受けるか、受けるなら送料を誰が払うかを、売る前に決めて書いておきます。

当社も受取拒否などで揉めたことがあり、返品ルールなどの規約を整理しておく必要があると実感しました。海外の購入者とは言葉も法律も違うため、規約は国内向け以上に先に用意しておくものです。

為替が動くと、表示価格か利益が動く

現地通貨で価格を表示すると、為替レートが動いたときにどちらかが変わります。Shopifyでは、為替レートを自動で適用するか、手動で決めるかを選べます。自動なら為替に合わせて表示価格が変わり、手動なら表示価格は固定されるかわりに、円での受取額が動きます。円安と円高のどちらに振れても利益が残る価格にしておきます。

関税の負担を、購入前に伝えていない

関税を受取人が払う条件なら、そのことを商品ページと購入画面に書きます。届いたときに初めて請求されると、購入者には想定外の出費になります。米国宛ての郵便のように差出人が先に払う場合は、関税を価格か送料に含めます。

届かない・遅いという問い合わせ

国際配送は国内より日数がかかり、通関で止まることもあります。追跡番号が付く配送方法を選び、配送日数の目安を購入前に示しておくと、問い合わせが減ります。

越境ECの始め方は5ステップ、個人でも同じ

個人でも会社でも、始める順番は変わりません。いちばん先に確かめるのは、売りたい商品を海外に送れるかどうかです。

  1. 売りたい商品を送れるか確かめる

    日本郵便では、香水・スプレー缶・マニキュア・モバイルバッテリーなどは、どの国にも国際郵便で送れません。これとは別に、国ごとの禁制品もあります。肉・野菜・果物などの食品は、国によって送れないことがあります。

  2. 売り方を選ぶ

    海外からの注文があるか分からない段階なら、国内のネットショップの海外販売機能で反応を見ます。注文が続くようになったら、自社サイトで直接売る形に移ります。

  3. 海外向けの価格を決める

    海外カードと両替の手数料・国際送料・米国向けなら関税を足して、利益が残る価格にします。国内と同じ価格のまま売ると、手数料の差だけ利益が減ります。

  4. 言語・通貨・決済を設定する

    商品ページと購入までの画面を、相手国の言語と通貨で表示します。海外発行のカードで決済できるかも確かめます。

  5. 配送と返品のルールを決めて書く

    配送方法と日数・関税を誰が払うか・返品を受けるかどうかを、購入前に読める場所に外国語で書いておきます。

出典:日本郵便(国際郵便として送れないもの)

個人で続けて売るなら、国内向けのネットショップと同じく開業届を出します。開業の手続きとサービスの選び方は個人のネットショップ開業におすすめのサービスにまとめています。

まとめ

越境ECで押さえること

  • 越境ECは、インターネットで海外の消費者に売ること。ネットショップの仕組みは国内と同じ
  • 2024年に米国と中国の消費者が日本の店から買った額は4兆2,350億円で、日本の消費者が買った額の約9.6倍
  • 売り方は6つあり、小さく始めるなら自社サイト・国内サービスの海外販売機能・海外モールの3つから選ぶ
  • 「越境EC代行」は購入代行・販売代行・運営代行の3種類で、手数料を払う人とショップの作業が違う
  • 5,000円の海外注文で引かれる額は、ShopifyのBasicが195〜295円、BASEのかんたん海外販売が395〜620円
  • 米国宛ての郵便は、差出人が関税を先に払う形に変わった
  • 自分で輸出した売上は、証明書類を7年間保存すれば消費税が免除される

最初の注文が来るか分からないうちは、国内のサービスの海外販売機能で固定費をかけずに試します。海外の注文が毎月続くようになったら、1件あたりの手数料が低い自社サイトに移ると手元に残る額が増えます。まずは売りたい商品が相手国に送れるかを確かめるところから始めてください。

金額と条件は、いずれも2026年10月15日時点の公式ページと公的機関の資料の記載です。手数料や配送の条件は変わることがあるため、始める前に各サービスと日本郵便の最新の案内を確認してください。