開業直後の集客は「すでにある接点」から始める

開業したばかりのネットショップは、検索にもSNSにもまだ存在を知られていません。最初の注文にいちばん近いのは、すでに自分や商品を知っている人です。

知人・取引先・SNSのフォロワー・実店舗やイベントで会ったお客さまは、店を探してもらう必要がありません。公開を知らせるだけで、店に来てもらえます。検索やSNSの新しいフォロワーから注文を取るには時間がかかりますが、既存の接点は公開したその日から使えます。

当社も自社ブランドのECを公開した直後は、最初の注文を取るためにSNS・広告・SEOに取り組みました。どれも集客の定番ですが、効き始めるまでの時間とかかる費用は、方法ごとにまったく違います。同時に始めると、どれが効いているのか判断がつかなくなります。

だから順番を決めて取り組みます。次の章で、集客方法を4つの段階に分けて並べます。

集客方法は、時間と費用で4つの段階に分かれる

集客方法は種類で並べると10種類近くになります。ただ、開業直後に知りたいのは種類ではなく、「いつ効くか」と「いくらかかるか」です。この2つで分けると、4つの段階に整理できます。

段階主な方法効き始め費用続けたときの効果
1. 既存の接点知人・取引先・フォロワー・常連客への告知公開した日からかからない人数に上限があり、広がりにくい
2. 無料の掲載先Googleの無料リスティング、モールやマーケットへの出品登録や審査のあと無料、またはモールの手数料商品を探している人に届く
3. 積み上げ型SEO・ブログ・SNS投稿・メール配信時間がかかる主に作業時間止めても資産として残る
4. 広告検索広告・SNS広告・ショッピング広告出稿した日からクリックや表示ごとにかかる止めると訪問も止まる

上から順に、費用がかからず早く効くものから並んでいます。ただし上にあるものほど、届く人数に限りがあります。開業直後は1と2で最初の注文を取り、3を並行して積み上げます。4の広告は、1注文に払える上限を計算してから足します。費用をかけずに確実に進められる順番です。

開業直後から集客方法を足していく順番最初は既存の接点への告知で最初の注文を取ります。次にGoogleの無料リスティングなど無料の掲載先に商品を載せます。並行してSEOやSNS投稿、メール配信を積み上げます。広告は1注文あたりの上限を計算してから最後に足します。集客方法を足していく順番既存の接点無料の掲載先積み上げ型SEO・SNSメール広告上限を計算してから公開した日登録のあと並行して続ける数件売れてから費用が小さく早い届く人数が多い

広告を最後に置くのは、効かないからではありません。広告は出した日から訪問者を連れてきますが、商品ページが買われる状態になっていないと、費用をかけて離脱を増やすことになるからです。先に数件売って、買われる形になっているかを確かめてから使います。

公開から最初の注文までにやること

段階1と2は、どれも費用をかけずに始められます。公開の前後で、次の順に進めます。

  1. 知らせる相手のリストを作る

    知人・取引先・SNSのフォロワー・実店舗の常連など、公開を知らせられる相手を書き出します。公開してから考えると告知が遅れるので、公開前に作っておきます。

  2. アクセス解析を入れる

    どこから訪問者が来たかを測れるようにします。あとから入れても過去のデータは取れないため、公開と同時に入れます。

  3. 公開を知らせる

    リストの相手に、店のURLと商品の特徴を伝えます。一斉に送るより、相手ごとに「なぜこの商品を勧めるか」を一言添えるほうが訪問につながります。

  4. Googleの無料リスティングに商品を載せる

    Google Merchant Centerに商品を登録すると、Googleのショッピングタブや画像検索などに無料で掲載されます。返品ポリシーの掲載と送料の設定が条件になっているため、店の側で先に整えておきます。

  5. Search Consoleに店を登録する

    Googleの検索結果にどのページが、どんな言葉で表示されているかを確認できる無料のツールです。段階3のSEOを始める前の土台になります。

  6. 購入者の連絡先を残す導線を作る

    購入時にメール配信の同意を取る欄を用意します。同意がないと、後からメールで再来店を促せません。

Googleの無料リスティングは、Googleの検索結果のリッチリザルトやYouTube、Googleレンズなどにも商品が表示される仕組みです。表示に費用はかからず、必要なのは商品の画像・価格・説明・在庫状況などのデータです。

出典:Google Merchant Center ヘルプ(無料リスティングについて)

最初の数件が売れたら、どの経路から来た人が買ったかをアクセス解析で確認します。知人経由の注文ばかりなら、知らない人に届く経路がまだできていない状態です。段階2と3を厚くしていきます。

モールへの出品は、集客を手数料で買う方法

段階2のもう1つの選択肢が、楽天市場やAmazonのようなモール、minneやCreemaのようなマーケットへの出品です。モールにはすでに商品を探している人が集まっているため、自分の店にまだ訪問者がいない時期でも、商品を見てもらえます。

そのかわり、モールの手数料は自分の店より高くなります。お客さまの連絡先もモール側に残るため、2回目以降の購入を自分の店に呼び込むことは難しくなります。

モールを併用するメリット

  • 開業直後から、商品を探している人に見てもらえる
  • 店の名前を知らない人にも見つけてもらえる
  • 売れた商品から、自分の店で何を推すかを決められる

モールを併用するデメリット

  • 手数料が自分の店より高い
  • お客さまの連絡先が自分の店に残らない
  • 在庫を2か所で管理する手間が増える

モールの手数料の差は、集客の対価と考えると判断しやすくなります。自分で集客できる見込みが立つまではモールで売り、リピートしてくれるお客さまは自分の店に案内する、という使い分けもできます。サービスごとの手数料は、次の記事で比べています。

目標の注文数から、必要な訪問数を逆算する

集客の目標は「アクセスを増やす」ではなく、注文数で決めます。注文数は、訪問数に購入率を掛けたものです。逆に言えば、目標の注文数を購入率で割ると、必要な訪問数が出ます。

必要な訪問数 = 目標の注文数 ÷ 購入率

購入率は商材や価格で大きく変わるため、ここでは仮の数字で計算します。月30件の注文を目標にした場合は次のとおりです。

購入率(仮定)月30件に必要な訪問数1日あたり
0.5%6,000訪問200訪問
1%3,000訪問100訪問
2%1,500訪問50訪問

購入率が1%から2%に上がると、必要な訪問数は半分になります。集客を増やすことと、購入率を上げることは、注文数に対して同じだけ効きます。訪問者を倍にするより、商品ページの写真や説明を直して購入率を上げるほうが、費用がかからないことも多くあります。

自分の店の購入率は、開業直後はまだ分かりません。最初の数百訪問で実際の数字を取ってから、この式に入れ直します。仮の数字のまま広告の予算を決めないことが大切です。

広告は「1注文に払える上限」を計算してから使う

広告は、知らない人を出した日から連れてこられる方法です。そのかわり、売れるたびに費用がかかります。1注文を取るのにかかった広告費がその注文の粗利を超えると、売れるほど赤字が増えます。

1注文の粗利が、広告費の上限になる

粗利は、商品価格から原価・決済などの手数料・店が負担する送料を引いた額です。4,000円の商品で、原価率40%・手数料5%・送料はお客さま負担と仮定して計算します。

4,000円の商品で広告に払える上限4,000円の商品は、原価1,600円と手数料200円を引くと粗利が2,200円残ります。1注文を取るための広告費がこの2,200円を超えると赤字です。購入率1%なら1クリック22円、2%なら44円が上限になります。4,000円の商品の内訳(仮定)原価1,600円粗利2,200円手数料200円1注文に払える広告費の上限1クリックの上限 = 粗利 × 購入率購入率1%なら22円/2%なら44円1クリック50円・購入率1%で出すと1注文の広告費は5,000円1件売るごとに2,800円の赤字

この例では、1注文の粗利は2,200円です。広告で1注文を取るのにかけてよい費用は、最大で2,200円です。これを超えると、広告で売れた注文はすべて赤字になります。

手数料はサービスと決済手段で変わります。自分の店の実際の料率は、次の記事で計算できます。

1クリックに払える上限を出す

検索広告やSNS広告の多くは、クリックごとに費用がかかります。1注文の広告費は、1クリックの単価を購入率で割ったものです。ここから、1クリックに払える上限が出ます。

1クリックに払える上限 = 1注文の粗利 × 購入率

1クリックの単価と購入率1注文の広告費粗利2,200円との差
50円・購入率1%5,000円2,800円の赤字
30円・購入率1%3,000円800円の赤字
40円・購入率2%2,000円200円の黒字

同じ広告でも、購入率が1%か2%かで結果が逆転します。広告の成果を左右するのは、クリック単価よりも、着いた先の商品ページで買われるかどうかです。だから広告は、商品ページで数件売れることを確かめてから使います。

リピート購入がある商材なら、2回目以降の粗利も含めて上限を考える方法もあります。ただし、実際のリピート率が分かってからにします。開業直後に見込みのリピート率で上限を引き上げると、外れたときに赤字だけが残ります。

カートの機能で、無料でできる集客を確かめる

ネットショップのカートには、集客に使える機能が最初から用意されていることがあります。外部のツールを契約する前に、自分のカートで何ができるかを確かめておくと、費用と手間を省けます。

Shopifyの場合は、次の2つが段階2と3にそのまま使えます。

機能できること費用
ShopifyのGoogle & YouTubeアプリ商品をGoogle Merchant Centerに同期し、無料リスティングに載せる。広告の出稿もできるインストールは無料。広告費はGoogle広告のアカウントに請求される
Shopifyのメール配信(Shopify Messaging)購入者や登録者へのメール配信月10,000通まで無料。超えた分は1,000通あたり1米ドル

出典:Shopify(Google & YouTube)/Shopify(Shopify Messaging)。2026年10月時点の内容で、条件は改定される可能性があります。

商品データをGoogleに同期できると、商品を追加するたびに手で登録し直す必要がありません。商品数が増えるほど、この差が作業時間に効いてきます。他のカートを使っている場合も、Merchant Centerとの連携とメール配信の機能があるかを、各社の公式情報で確認してください。

集客の作業を続けられるかどうかは、こうした機能がカートに揃っているかで変わります。カートを選ぶ段階で、集客に使う機能まで確認しておくと、開業後に外部ツールを足す手間が減ります。

SNS・SEO・メールは「続けられる量」で選ぶ

段階3の積み上げ型は、費用がかからないかわりに作業時間がかかります。どれも途中でやめると、それまでの積み上げが効く前に止まります。全部に手を出すより、続けられる量に絞って選びます。

SNSは、商品が伝わる形式で1つ選ぶ

SNSは、商品の魅力が何で伝わるかで選びます。見た目で伝わる商品なら画像中心のSNS、使い方や作る過程を見せたい商品なら動画中心のSNSが向いています。

投稿する内容は、商品の写真を並べるだけでは続きません。次のように、商品そのもの以外の題材を持っておくと、投稿が途切れにくくなります。

  • 使っている場面や、サイズ感が分かる写真
  • 作る過程や、素材を選んだ理由
  • 入荷・再入荷・新商品のお知らせ
  • お客さまから届いた感想(本人の了解を取ったもの)

開業直後に複数のSNSを並行すると、投稿の準備に時間を取られて更新が止まりがちです。まず1つに絞り、どんな投稿から店への訪問が生まれたかをアクセス解析で確かめてから、2つ目を足します。

SEOは、商品ページとカテゴリーページから

SEOは、検索で店を見つけてもらうための取り組みです。ブログ記事を書く前に、商品ページとカテゴリーページを整えます。商品名と説明文に、お客さまが検索で使う言葉が入っているかを確認します。

検索からの訪問は、ページが評価されるまで時間がかかります。開業直後の集客をSEOだけに頼ると、訪問者がほとんどいない期間が続きます。段階1と2で注文を取りながら、並行して積み上げるものと考えてください。

メール配信は、一度買った人に届く

メール配信は、一度買った人にもう一度来てもらうための方法です。新しいお客さまを広告で集めるより費用がかからず、反応も読みやすい特徴があります。

ただし、広告や宣伝のメールを送るには、原則として受信者の事前の同意が必要です。特定電子メール法のルールで、送信者の名称や、配信を停止するための連絡先の表示も義務づけられています。購入時に同意を取る欄を用意しておくのは、このためです。

出典:迷惑メール相談センター(特定電子メール法の概要)

インフルエンサーや紹介を使うときは、広告表示が店の責任になる

インフルエンサーに商品を紹介してもらう方法や、商品を提供して投稿してもらう方法も、集客の手段として使われます。このとき注意したいのが、2023年10月1日に始まったステルスマーケティングの規制です。

規制の対象は依頼した店の側

広告であるのに広告と分からない表示は、景品表示法の違反になります。規制の対象は商品を売る事業者(広告主)で、依頼を受けたインフルエンサーは対象ではありません。投稿に広告であることの表示がなければ、責任を問われるのは依頼した店です。

依頼するときは、投稿に「広告」「PR」などの表示を入れてもらうことを条件にしておきます。SNSの投稿やレビューの投稿も対象に含まれます。

出典:消費者庁(ステルスマーケティングに関する景品表示法違反)

集客に使う時間を決めて、月に一度だけ数字を見る

集客は、注文が入っても入らなくても同じだけ時間がかかる作業です。上限を決めずに取り組むと、商品登録や発送など、ほかの作業の時間を圧迫します。週に何時間を集客に使うかを先に決めて、その範囲で続けられる方法を選びます。

成果を確かめるのは、月に一度で足ります。毎日の数字は、投稿や広告の単発の影響でぶれるからです。見る数字は次の3つに絞ります。

見る数字分かること次に打つ手
訪問数集客の量が足りているか必要な訪問数に届かないなら、段階2と3を厚くする
購入率着いた人が買っているか低いなら、集客より先に商品ページを直す
経路別の注文数どの集客方法が注文につながったか注文につながった経路に時間を寄せる

3つ目の経路別の注文数が、時間の配分を決める材料になります。訪問が多くても注文につながらない経路は、時間を減らす候補です。逆に、訪問は少なくても注文が出ている経路は、続ける価値があります。

訪問者が来ているのに売れないときは、集客以外を見る

集客に取り組んで訪問者が増えても、注文が増えないことがあります。このとき広告やSNSを増やしても、結果は変わりません。訪問者がいるのに売れないなら、原因は集客ではなく商品ページか購入手続きにあります。

確認する順番は、カートに商品が入っているかどうかで分かれます。カートに入らないなら、写真・説明・送料の表示を見直します。カートに入るのに購入されないなら、会員登録の必須化や決済手段の不足を疑います。

切り分けの詳しい手順は、次の記事で解説しています。

また、集客は注文数に関係なく時間がかかる作業です。運営のほかの作業とどう配分するかは、こちらで計算しています。

まとめ

ネットショップの集客は、方法を並べるより、順番を決めることで成果が出やすくなります。開業直後は既存の接点と無料の掲載先で最初の注文を取り、SNSやSEOを並行して積み上げます。広告は、1注文に払える上限を計算してから使います。

開業直後の集客チェックリスト

  • 公開を知らせる相手のリストを、公開前に作った
  • アクセス解析を、公開と同時に入れた
  • Google Merchant Centerに商品を登録し、無料リスティングに載せた
  • 購入時にメール配信の同意を取る欄を用意した
  • 目標の注文数から、必要な訪問数を計算した
  • 広告を出す前に、1注文の粗利と1クリックの上限を計算した
  • インフルエンサーに依頼するときは、広告表示を条件にした